平成29年最初のケアマネジャー研修のテーマは、『ケアマネジメント基礎』です。
初心者の方にはタイムリーなテーマであり、中堅・ベテランクラスの方には今一度初心を思い出そうということで、このテーマにいたしました。
また、前2回の流れを引き継ぎ、認知症の人へのケアも盛り込んでいただきました。
高齢者の尊厳を支えるケア
1 尊厳と人権
尊厳とは何でしょうか?
尊厳とは、「尊く厳かなこと」ですが、介護における権利擁護と人権尊重というものは、他者の支援は必要としていても、権利の主体としての存在は何ら変わるものではないと言えるでしょう。
人権に関しては、①精神的自由権、②身体的自由権、③経済的自由権があり、日本国憲法の中で、基本的人権が保障されています。13条に尊厳や幸福権について、25条には生存権についても書かれています。条文には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあり、「すべて国民は」には、【無差別・平等】、「最低限度の生活を営む」には、【最低生活保障】、全文で【保護の補足性】、【国家責任】が盛り込まれています。
次にQOLの考え方として、QOLの“L”をどのように捉えるか?
人生?生活?捉え方によってQOLは、「人生の質」「生活の質」「よく生きる」「より良く生きる」と訳されます。
世界保健機構(WHO)によると、健康とは「単に疾病がないということではなく、身体的、心理的、社会的に全体として満足のいく状態にあること」と定義されており、①身体機能、②こころの健康、③社会生活機能の全てにおいて良い状態にあれば健康と言えます。
2 ノーマライゼーション
ノーマライゼーションの訳は「普通に」となりますが、その人にとっての普通がこれからも続いていくことを意味しています。アセスメントする際に、『受容・傾聴・共感的理解』が必要ですが、その人にとっての望む生活とは何か?を考える必要があります。そして、QOLやADLの向上することが、自己実現につながっていくのです。
※共感的理解・・・「わかります」ではなく「ごめんなさい。わかりません」から入る
では、自立支援とは何か。障害や病気により多少の不便や不安があったとしても利用者が、その人なりに満足した日々を過ごせるように支援していくこと。つまり、他者に生かされた状態にある生活ではなく、利用者が自らの意思で生きていける状態、生きていることに喜びを見出せる状態となるように支援していくこと。自立的生活を可能にする最大のカギは、生活を維持する上での判断を利用者が自らの意思で行うことである。
利用者はいつも容易に自分の意思を表出できるわけではありません。混乱、迷いなどで結論を出せないこともあります。介護者の適切なアドバイスが必要です。選択した場合にもたらされる結果(メリット・デメリット)も伝えます。
3 求められる介護福祉士像
介護福祉士に求められるものは以下のようなものがあります。
① 尊厳を支えるケアの実践
② 現場で必要とされる実践的能力
③ 自立支援を重視し、これからの介護ニーズ、政策にも対応できる
④ 施設・地域(在宅)を通じた汎用性のある能力
⑤ 心理的・社会的支援の重視
⑥ 予防からリハビリテーション、看取りまで、利用者の状態に対応できる
⑦ 多職種協働によるチームケア
⑧ 1人でも基本的な対応ができる
⑨ 「個別ケア」の実践
⑩ 利用者・家族・チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力
⑪ 関連領域の基本的な理解
⑫ 高い倫理性の保持
4 多書億種連携の意義と目的
社会福祉士及び介護福祉士法の第47条に「介護福祉士は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に、認知症であること等の心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない」とあり、介護福祉士倫理綱領の4に「介護福祉士は、利用者に最適なサービスを総合的に提供していくため、福祉、医療、保健その他関連する業務に従事する者と積極的な連携を図り、協力して行動します」とある。
認知症の種類と症状の適切な理解と対応法
認知症のケアにあたっては、認知症について正しい認識を持つことが前提となります。認知症は原因疾患からの症状であり、脳の器質的な疾患です。認知症になると何もわからなくなる、とうい誤解が未だに続いています。認知症になっても豊かな感情は保たれ、本人は自身の状態に悩んでいる、ということも理解しましょう。
1 認知症とは何か
まずは、認知症の定義ですが、世界保健機構(WHO)の説明をもとに言い換えると、「認知機能が発達するプロセスを経た大人が、アルツハイマー病、脳血管性疾患などの脳疾患や脳組織に影響を与える他の疾患にかかってしまうことで、認知機能を発揮することが難しくなってしまう状態が認知機能の障がいです。そのために日常生活を自分らしく送っていくために必要な活動がスムーズに行えなくなり(自立の障がい)、自分で自分のことを決められなくなってしまうのです(自律の障がい)。認知症は、一度獲得された知能が後天的な器質的な障がいによって持続的に低下した状態をいいます。
認知症は大人がなる状態であり、18歳未満の場合は「知的障害」と呼ばれます。また、認知症の原因疾患は約70個あると言われています。
認知症の原因になる病気
3 中核症状と行動・心理症状
中核症状
認知症の人にみられる認知機能障害を中核症状といいます。中核症状は、程度の差はあれ全ての認知症の人に認められる症状で、疾患の進行とともに悪化する症状です。
認知症になると出現する特徴的な中核症状
行動・心理症状
行動・心理症状(BPSD)とは、認知症の人にみられる知覚、思考内容、気分または行動の障害による症状をいいます。
① 行動症状:身体的攻撃、喚声、不穏、焦燥、徘徊、文化的に不適切な行動、性的脱抑制、収集癖、ののしり、つきまとい など
② 心理症状:不安、抑うつ、幻覚、妄想 など
※行動・心理症状は人によって認められない場合があります。
4 認知症の人へのかかわりの基本
認知症の人とかかわる場合、以下の基本的な姿勢で接することが重要です。
① 介護者は自分自身の特徴を知る
② 介護者の気持ちを確認する
③ 介護者の身体の状態を確認する
④ 自分の表現を確認する
⑤ 認知症の人の自尊心を傷つけない
⑥ 認知症の人の話に傾聴の姿勢をとる
⑦ 認知症の人の話をそのまま受け入れる
⑧ 非審判的態度をとる
⑨ 認知症の人の価値観を尊重する
また、認知症の人へのアセスメントで大事なことは以下のようになります。
① 認知症の中核症状や薬の副作用の影響
② 疲れなど、夕方に起こる体調不良や痛み、空腹、便秘や尿意などの排泄との関係
③ 家族に会えない寂しさ、子供を心配する優しさなど
④ 夕食の香り、薄暗さ、静けさなど、環境からくる刺激
⑤ 他の利用者や職員との係わりの深さ
⑥ 物や設え(しつらえ)などの物理的な環境
⑦ 日中に行われている活動や日課に基づいた役割など
⑧ 利用者のこだわり、子供への気遣い、母親(または父親)としての責任感など
要するに 認知症の人が何を求めているのかを多方面から把握する ことです。
次に、認知症の人への働きかけとして重要なことは以下になります。
① 見当識障害の支援(時・人・場所への配慮)
② 機能的な能力への支援
③ 環境における刺激の質と調整
④ 安全と安心への支援
⑤ 生活の継続性への支援
⑥ 自己選択への支援
⑦ プライバシーの確保
⑧ 他者とのふれあいの促進
認知症豆知識
*日本中に認知症の人は何人いるか? ・・・ 462万人
*85歳以上の高齢者の3人に1人
*要介護認定者の7割
*施設入所者の8割
ロジック・コミュニケーション
仕事において遭遇する様々な問題を解決し、乗り越えていくために必要なスタンスとは?
ロジカルシンキングを身につけることが大事です。ロジカルシンキングとは、論理的思考をいい、「2つの事柄のつながり(関係性)を正しく認識する能力」です。つながりを正しく認識できると、物事を筋道立てて考えることができ、筋道が立つと、たとえ難しそうな話でも、分かりやすく伝えることができます。
ポイント①言いたいことをわかり易く伝える
ポイント②正確に質問の意図をくみ取る
例1:仮説思考・ゼロベース思考・ポジティブ思考の三角ロジック
論理的手法のひとつに「MECE」(ミーシー)というものがあり、これは、無駄なく・漏れなく・ダブりなくの意味があり、無駄やダブりは、徐々に改善すればよい。
ケアマネジメントプロセスの中でのポイント
① 記録のポイント
「5W1H」で記録する
② 評価のポイント
①できた ②できなかった ③わからない の三種類で
*なぜできたのか *なぜできなかったのか などを分析すること
高齢者虐待防止・身体拘束廃止の取組や制度の中でのポイント
① 身体拘束を禁止する理由
「尊厳が失われるから」
等を学習いたしました。
次回は、2月22日”アセスメントについて”となります。