平成30年度の介護支援専門員研修がスタートしました。
第1講目の介護支援専門員研修は『医療関係』について学びました。
細かく分類しますと、①高齢者のかかる疾患と最新傾向 ②薬の副作用と効果・ジェネリック ③ターミナルケア について学びました。前半の「高齢者のかかる疾患と最新傾向」については、全回同講師から受けた研修のおさらいでした。
①高齢者のかかる疾患と最新傾向
Ⅰ 加齢と老化
加齢とは、生まれてから死ぬまで、年を重ねていく時間の経過をいい、老化とは、加齢に伴い体の細胞や器官に退行性の変化が生じること(様々な環境の変化に対応する能力が低下すること)をいう。
老化の原因としては、遺伝、生活習慣、環境、疾病、精神・心理、体質などがあり、これらは個人差がある。
Ⅱ 高齢者の症状の特徴
①ホメオスタシス(恒常性)の低下により、全身の状態が悪化しやすい
②複数の疾患にかかっていることが多い
③疾病の回復が遅く、慢性化・重症化しやすい
④症状や進行に個人差が大きい
⑤定型的(典型的)な症状が出ないことがある
⑥脱水症状を起こしやすい
⑦薬の副作用が出やすい
⑧心理的・身体的な誘引により、精神神経症状を起こしやすい
Ⅲ 器官ごとの疾患の特徴と治療やケア
①生命を維持する(循環器系)
*循環器系のはたらき
・心臓:心筋(不随意筋)で出来ており、収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送り出すポンプのような働きをする
・血管:血液を全身に届ける(動脈)、心臓に戻す(静脈:逆流防止弁がある)
*加齢による変化
・心臓の収縮力が弱くなり、送り出される血液量が少なくなる
・動脈の弾力性が低下し、血圧が高くなる
・静脈の弁が硬くなり、足がむくみやすくなったり、静脈瘤ができやすくなったりする
循環器系の疾患として「高血圧」「狭心症・心筋梗塞」「不整脈」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
②生命を維持する(呼吸器系)
*呼吸器系のはたらき
・空気を吸って酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する
・呼吸器系は、気道と肺で構成されている
・横隔膜と肋間筋などの呼吸筋によって、呼吸運動が行われている
*加齢による変化
・呼吸筋や肺の弾力性が低下し、換気量が減少する
・気道粘膜の抵抗力や咳反射が弱くなり、感染を起こしやすくなる
呼吸器系の疾患として「肺炎」「気管支喘息」「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
②生命を維持する(呼吸器系)
*呼吸器系のはたらき
・空気を吸って酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する
・呼吸器系は、気道と肺で構成されている
・横隔膜と肋間筋などの呼吸筋によって、呼吸運動が行われている
*加齢による変化
・呼吸筋や肺の弾力性が低下し、換気量が減少する
・気道粘膜の抵抗力や咳反射が弱くなり、感染を起こしやすくなる
呼吸器系の疾患として「肺炎」「気管支喘息」「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
③体を調整する(脳神経系)
*脳神経系のはたらき
・体の内外の情報を処理し、生体を調整する
・中枢神経系(大脳、間脳、小脳、脳幹、脊髄)
・末梢神経系(体性神経、脳神経、自律神経)
*加齢による変化
・脳神経細胞の数が減少し、神経伝達の速度が低下する
・身体各機能の調整がとれなくなる
脳神経系の疾患として「脳血管障害」「硬膜下血腫」「パーキンソン病」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
④動く(運動器系)
*骨格系のはたらき
・筋肉とともに身体を支え運動を行う
・内臓を保護する。カルシウムを蓄える
・造血機能(血球成分を作る昨日)がある
*筋系のはたらき
・骨とともに体を支え、動かす(呼吸にも関わる)
・熱を産生する
*加齢による変化
・骨密度も低下し、骨折しやすくなる
・関節軟骨や関節液が減り、関節可動域が低下する
・筋肉量が減少し、活動が低下する
運動器系の疾患として「骨粗鬆症」「関節リウマチ」「脊柱管狭窄症」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
⑤食べる・出す(消化器系)
*消火器のはたらき
・食物を取り込んで、分解(消化)し、身体に取り込む(吸収する)
・吸収した後の「カス」を便として排出する
*加齢による変化
・唾液の分泌や舌・喉の動きが低下し、嚥下しにくくなる(誤嚥しやすくなる)
・栄養の吸収がしにくくなる
・腸蠕動や腹圧が低下し、便秘しやすくなる
・肛門括約筋の筋力低下により、便失禁を起こしやすくなる
消化器系の疾患として「胃・十二指腸潰瘍」「感染性胃腸炎」「便秘」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
⑥出す(泌尿器系)
*泌尿器系のはたらき
・体内で発生した老廃物を腎臓で濾過し、排出する
・腎臓は体内の水分、塩分、pH、血圧等も調整している
・尿は腎臓から尿管を経て、膀胱に溜まり、自分の意思(大脳)で排尿をコントロールしている
*加齢による変化
・膀胱容量の減少により、頻尿になりやすい
・膀胱の伸縮性や、骨盤低筋の筋力低下により、尿失禁を起こしやすい
・腎臓機能が低下するため、薬の影響を受けやすい
泌尿器系の疾患として「尿路感染症」「腎不全」「尿失禁」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
⑦体を調整する(内分泌代謝系)
*内分泌のはたらき
・ホルモンを分泌して体の働きを調整する
…成長ホルモン:成長を促す。骨の成長を促進する
…バソプレシン(抗利尿ホルモン):尿の量を減少させる
…甲状腺ホルモン:身体中の代謝に関与する
…副腎皮質ホルモン:糖代謝の調節、抗炎症、抗ストレス
…インスリン:血糖値を下げる
…エストロゲン:子宮内膜の増殖、骨や脂質の代謝
*代謝とは
・生体内で生じる全ての化学変化とエネルギー変換のこと
*加齢による変化
・各ホルモンの分泌減少により、機能低下が出現する
・エストロゲン(女性ホルモン)の分泌減少により骨密度が低下し、血清コレステロール値が上昇する
・身体各所での代謝が低下する
内分泌代謝系の疾患として「糖尿病」「甲状腺機能亢進・低下」「脂質異常症」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
※LDL:悪玉コレステロール 、 HDL:善玉コレステロール
⑧見る(感覚器系:目)
*ものを見るしくみ
・光刺激として、角膜、水晶体、網膜から視神経を経て、脳に伝わる
*加齢による変化
・水晶体が硬くなり、焦点を合わせにくくなる
・水晶体が濁り、見え方や色の濃淡が分かりにくくなる
・視神経の細胞数が少なくなり、奥行き間隔が低下する
・涙が作られにくくなり、目が乾きやすくなる
感覚器系の目の疾患として「白内障」「緑内障」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
⑨聴く(感覚器系:耳)
*音を聞くしくみ
・音は振動として、外耳、中耳、内耳に伝わり、聴神経から脳に伝わる
・内耳の前庭器官は平衡感覚を司っている
*加齢による変化
・耳の各組織が硬くなり、音が伝わりにくくなる(特に高い音が聞き取りにくくなる)
・聴神経の細胞数が少なくなり、「音」は聞こえても「ことば」として聞き取りにくくなる
※感音性難聴…補聴器は意味がない
⑩味わう(感覚器系:舌)
*味わうしくみ
・味は化学物質として唾液に溶けて、味蕾にある味細胞で感知され、顔面神経や舌咽神経を経由して脳に伝わる
・嗅覚や触覚、温度感覚も関係している
*加齢による変化
・味蕾の数が減少し、特に甘味、塩味を感じにくくなる
・嗅覚の低下により、味を感じにくくなる
・唾液の分泌が減少し、化学物質が溶け出しにくくなり、味を感じにくくなる
感覚器系の舌の疾患として「舌炎・口内炎」「味覚障害」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
⑪触れる(感覚器系:皮膚)
*皮膚感覚のしくみ
・皮膚にある受容細胞で圧力や温度等の物理的刺激を感知し、感覚神経から脳に伝わる
・触覚、圧覚、温覚、冷覚、痛覚等がある
*加齢による変化
・皮膚や粘膜の受容体や、神経細胞が減るため、皮膚感覚が低下する
…けがややけどをしやすくなる
…暑さを感じにくいため、熱中症になりやすくなる
…寒がりになる
感覚器系の皮膚の疾患として「褥瘡」「帯状疱疹」「疥癬」を例に各疾患の特徴と治療とケアについて下表を参照してください。
※褥瘡のある利用者への訪問看護として『皮膚排泄ケア認定看護師(WOC)』がいる事業所に変えてみるのもよい
※帯状疱疹に『水疱瘡のワクチン接種』が有効かもしれないと言われている
②薬の副作用と効果・ジェネリック
Ⅰ 薬の服薬介助 5つの確認
① その利用者さんのもの?
② その時間は合っている?
③ その薬で合っている?
④ その量で合っている?
⑤ その方法で合っている?
これらを確認するためには、『薬剤情報提供文書』を確認すること。
Ⅱ 薬の主作用と副作用
◎主作用
・薬物の治療目的に沿った作用
◎副作用
・主作用以外の作用
・治療上必要のない作用
・生体に害をもたらす作用(有害作用)
・有害反応:薬物の使用によって生じた好ましくない作用
・有害事象:薬物使用との因果関係が明らかでないものも含んだ、薬物使用後に起こる好ましくない事象
Ⅲ 高齢者の薬の効き方の特徴
脂肪組織への薬物の蓄積、水分量減少による薬物の血中濃度上昇、肝機能の低下による薬物代謝の低下、腎機能低下による薬物排泄時間の遅れなどがあるが、薬物の吸収能力は維持されるため、薬の効き過ぎに注意する。
Ⅳ 在宅高齢者の薬物療法の特徴
複数の疾患に罹患し多数の薬物服用になる多剤併用(ポリファーマシー)、せん妄、認知機能の低下、便秘など副作用と高齢者によく見られる症状の類似、飲み忘れ、飲み過ぎ、飲み間違いが多い服薬アドヒアランスの低下がある。
※服薬アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること
Ⅴ 薬の投与経路
①経口投与:作用発現が遅い
②舌下投与:作用発現が早い
③直腸内投与:経口投与より作用発現が早い
④吸入:即効性、呼吸器疾患で使用
⑤注射投与:即効性があるが、侵襲度高い
⑥点眼・点鼻・点耳:局所作用と全身効果
⑦その他:経膣投与、脊髄腔内投与など
Ⅵ 内服薬の種類と特徴(経口投与)
大きく分類すると、固形状、粉状、液状に分けられる。
①固形状:錠剤・カプセル剤・・・用量が正確で、保管や携帯に便利。味やにおいを抑えてあるものが多い。大きいと飲み込みにくい。OD錠(口腔内崩壊錠剤)は口の中で溶かした後飲み込む。また水なしで内服できるので便利。
②粉状:顆粒剤・細粒剤・散剤・・・用量の微調整が可能。味やにおい等の刺激が強い。吸湿性が高い。
③液状:水剤・シロップ剤等・・・小児・高齢者でも飲み込みやすい。正確な量の計測が難しい。変形しやすい
Ⅶ ゆっくり効く内服薬がある?
服用回数を減らしたり、副作用を軽くするために、ゆっくり溶けて長く効く薬である徐放性製剤(テオドール、ヘルベッサーRカプセル等)
胃粘膜保護や胃酸の影響を避けるために、腸で溶ける薬である腸溶性製剤(バイアスピリン、オメプラゾン等)
これらの薬は、砕いたり、カプセルを開けたりすると、効果が下がったり、副作用が出やすくなる可能性がある。
Ⅷ 内服薬の服用時間
①食前・・・食事の30~60分前
食事に関する症状を改善する薬や、食事の影響を受けやすい薬。吐き気止め等。
②食後・・・食後30分以内
胃粘膜刺激が強い薬や、空腹時の服用で副作用が出やすい薬。鎮痛剤、ステロイド等。
③食間・・・食後約2時間
食事成分の影響を避け、胃粘膜へ直接作用させる薬。漢方薬、胃粘膜保護薬等。
④頓服・・・必要なとき
一時的に症状を改善する薬剤。鎮痛剤、狭心症治療薬、吐き気止め等。
Ⅸ 薬の作用を強くしたり、弱くする食べ物
Ⅹ 口腔内投与薬(飲み込まない薬)
①舌下錠・・・下の下に置き、溶けるまで保持する。狭心症治療薬のニトログリセリンが代表的。
②バッカル錠・・・歯肉と頬の間に挟み、唾液で自然に溶かす。麻薬性鎮痛剤フェンタニル等
③トローチ・・・下の上に置き、飲み込んだり噛んだりせずに出来るだけ長くなめて徐々に溶かす。口腔・咽頭の抗炎症や殺菌薬等」」
※これらは、飲み込んでしまうと効果が下がる。
Ⅺ その他
◎医行為ではない行為(薬)
・皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)
・皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼
・一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)
・肛門からの座薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること
※条件
・患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
・副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
・内用薬については誤嚥の可能性、座薬については肛門からの出血の可能性等、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと
◎服薬支援
・開封できない:一包化、薬杯の使用
・落してしまう:一包化、薬杯の使用
・飲み込みにくい:オブラート、ゼリー、剤型や投与方法の見直し依頼
・判別できない:一包化、服薬カレンダー
・飲み忘れる:一包化、配薬カレンダー、回数、薬剤数の見直し依頼
※服薬状況を観察し、医療職に連絡・相談する。訪問薬剤管理指導の活用。
◎簡易懸濁法
・経管栄養法での薬剤用途において、粉砕やカプセル開封をせずに、温湯(55℃)に入れ、崩壊・懸濁させる方法
・経管栄養チューブの閉塞を防止
・錠剤等を粉砕する道具が不要で手間がかからない
・懸濁法に適さない薬剤もあるため、事前に薬剤師に相談してから実施する
◎外用薬の種類
①貼付薬・・・貼るタイプの薬、パップ剤・テープ剤に分かれる。
パップ剤:水分が多く含まれ、肌への刺激は弱い(白い湿布)
テープ剤:脂溶性のため、剥がれにくく、患部への薬剤の浸透性や吸収性が高い(茶色い湿布)
②塗布薬・・・皮膚に塗る薬(軟膏、クリーム、ローション、ゲル、スプレー等)
③点眼薬・点鼻薬・点耳薬・・・目・鼻・耳に使う薬(液タイプや軟膏等塗るタイプ)
④座薬・・・主に肛門から挿入し、腸の粘膜で溶け吸収され効果を発揮する。食事や消化器の状態に影響を受けない。
⑤口腔用薬・・・口腔内に用いる(うがい薬、軟膏、スプレー等)
⑥吸入薬・・・吸い込んで使う薬(エアゾール、ドライパウダー、ネブライザー等)
◎塗布薬の種類
・軟膏:ワセリン、パラフィン等油のみの油脂性基剤。刺激性が少なく、患部を保護する作用がある。乾燥した患部、びらん、潰瘍等の湿潤した患部どちらにも使える。
・クリーム:水と油を界面活性剤によって混合した乳剤性基剤。軟膏に比べてべたつかず使用感がよい。主に乾燥した患部に適している。湿潤した患部には適さない。
・ローション:クリームより水分が多いもの。軟膏やクリームが塗りにくい頭髪部等に使用する。湿潤した患部には適さない。
・ジェル:透明な水性の基剤。ゲルが皮膚に膜を作る。湿潤した患部には適さない。
・スプレー:液体成分、アルコールが含まれていることも多い。手を汚さず広範囲に使用できる。使用量が分かりにくく、正常な皮膚にも散布してしまう可能性がある。
◎ステロイド外用薬
・皮膚の炎症を局所的に抑える薬
・適切な強さ・量・使用目的で使えば問題ない
・必要以上に強いものを長期に使うと皮膚細胞の増殖が抑制されて皮膚が薄くなってしまう
・顔・首・陰部等は吸収がよく、薬の効果が出やすい
・手のひらや足は吸収が低い
・安全期間の目安としては、顔・首・陰部は2週間、その他の部位は4週間
◎ステロイド外用薬の強さ
・最も強い(炎症の度合いが大変ひどくて部位が狭い場合、手足の難治性湿疹等、ケースを限定して使用)
・非常に強い(慢性的な炎症が治らない場合、急性の炎症を迅速に阻止する場合に使用)
・ストロングタイプ:強い(皮膚が赤く炎症を起こしてかゆみが強い、皮膚組織が壊れている場合等に使用)
・マイルドタイプ:普通、弱い(症状が軽い場合やデリケートな皮膚、乳幼児等に使用)
◎ジェネリック医薬品
・ジェネリック医薬品とは、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使っており、品質、効き目、安全性が同等な医薬品
・ジェネリック=「一般的な」という意味
・『有効成分の一般的名称+剤型+含量+会社名』とするよう統一されている
・特許期間が過ぎると、その権利は国民の共有財産となるため、他の製薬会社から同じ有効成分を使った医薬品が製造・販売できる
・新薬に比べ開発費が少ないために、低価格
◎新薬とジェネリック医薬品の違い
・有効成分以外の添加剤が異なる場合がある
・製品によっては、服用しやすいように大きさや味・香り等を改良したジェネリック医薬品もある
・ジェネリック医薬品は新薬と同じく、厳しい試験に合格し、厚生労働大臣の承認を受け、国の基準、法律に基づいて製造・販売している
③ターミナルケア
Ⅰ 人が死ぬということ
・生物学的な死
生理機能が非可逆的に停止すること。生命活動が回復不可能に停止すること。
・法律的な死
医師が死亡と判断し確認した場合に死亡診断書を発行することで成立する。
※臓器の移植に関する法律(臓器移植法)による定義
脳死した者の身体とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判断された者の身体をいう。
・臨床的な死
心停止、呼吸停止、瞳孔散大
Ⅱ ターミナルケアとは
・ターミナルケアとは、「疾患・障がい・老衰等により、回復の見込みのない人に対して、身体的な苦痛を軽減し、精神的な平安をもたらすためのケア」のことで、癌に関わらず、死を迎える全ての方へのケア。終末期ケアとも言われる。
・病気がわかって治療をするときから始まる緩和ケアの一部に、ターミナルケアが含まれるとも考えられる。
・ターミナルケアは、身体的・精神的苦痛を緩和・軽減することによって、自分らしい生活を最期まで送り、自分の人生に納得・満足して最期を迎えること、そして、残された家族が死を受け入れられることを目的としている。
Ⅲ 看取り介護とは
・看取りとは、近い将来死が避けられないとされた人に対し、身体的・精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること。
・終末期における尊厳の保持
最期までその人らしい人生を全うできる生き方を支え、介護職の価値観を押し付けないようにする。命尽きるまで意味のある日々となるよう、その人を取り巻く人的・物的環境を整える必要がある。
・事前意思確認
利用者本人、家族とともに終末期の過ごし方や最期の迎え方について、話し合いを重ね、同意を得る。残される家族の理解を深める関わりが求められる。
Ⅳ 看取りに関わる状況
①死亡数の将来推計・・・2040年が最も年間死亡数が多くなり、その後若干下がる。
②死亡の場所・・・日本は外国に比べて病院での死亡率が高い。近年は、医療機関以外の場所における死亡が微増する傾向にある。
③死亡に占める自宅死の割合・・・全国平均で12.7%。
一般国民において「自宅で最期まで療養したい」と回答した者の割合は約1割であった。自宅で療養して、必要になれば医療機関等を利用したいと回答した者の割合を合せると、約6割の国民が「自宅で療養したい」と回答した。
現状としては、自宅で最期を迎えたいが困難だと考えていることがわかる。
Ⅴ 死期が近づいたときの体の変化
◎1週間前頃~の変化
だんだんと眠られている時間が長くなっていく
↓
1,2日~数時間前の変化
声を掛けても目を覚ますことが少なくなる
眠気があることで、苦痛がやわらげられていることが多くなる
◎その他よくある変化
・飲食が減り、飲み込みにくくなったりむせたりする
・おしっこの量が少なく濃くなる
・つじつまの合わないことを言ったり、手足を動かす等落ち着きがなくなる
また
・喉元でゴロゴロという音がすることがある
・呼吸のリズムが不規則になったり、息をすると同時に肩や顎が動くようになる
・手足の先が冷たく青ざめ、脈が弱くなる
Ⅵ ターミナル期のケア
・日常生活のケアを丁寧かつ迅速に行い、少しでも心地よい状態にあるように支援する
・ケアをしながら、温かい手でタッチングしたり、音・温度・湿度・におい・明るさ等の生活環境を「本人好み」に整えたりすることも、安楽のための大切なケアである
・心地良い環境を整えるにあたり、介護者の工夫も大切ですが、「よかれと思ってしたこと」が、本人や家族にとって好みに合わない場合もある
・本人や家族がそれを好むかどうか、確認をしてから提供するようにする
患者さんが休まれているときも、こんなことをしてあげてください。
・手足をやさしくマッサージする
・患者さんのお気に入りの音楽を流す
・いつものようにご家族で普段のお話をされる
・唇を水や好きな飲物等でやさしく湿らせてあげる
Ⅶ スピリチュアルペインとは
・自分の死を身近に感じた時、自分の人生や生きる意味への問い、病気になり周囲に迷惑をかけていると思う罪悪感、死への恐怖等についての苦悩で、痛みを感じることがある
・「魂の痛み」とも訳されます
・スピリチュアルペインに対しては、さりげない会話の中から、本人の人生を振り返る「語り」を引き出す関わりが大切である
・やり残したこと、言い残したことはないか、対話の中から本人の気付きを得る
Ⅷ 家族・親族への対応
◎対家族
・生命予後が数週間となった頃には、体力が低下し、一人で日常生活を送ることが難しくなる
・家族の介護負担が大きくなり、家族も「この状態がいつまで続くのか」「そのように考える自分が情けない」と、疲労と自責の念に苛まれることもある
・介護職員は、その人らしい日常生活を安楽に過ごすための援助を、工夫しながら家族とともに行い、家族が疲弊しないように、介護体制を調整する
・本人だけでなく家族も感情表出ができるように関わり、近い時期に訪れる死別・喪失に嘆く(予期悲嘆)家族をサポートする
◎対親族
・ターミナル後期になると、いつもは疎遠な親族が集まることも多い
・親族と家族では持っている情報量が違うため、家族が何度も親族に同じような説明をしなければならなかったり、場合によっては、親族が主な介護者である家族に批判的な言動をとることもある
・家庭内のバランスが乱れ、家族は更なるストレスを生じてしまう
・家族の様々な思いを受け止め、必要であれば親族との調整をし、家族が行っているケアに対して、ねぎらいを伝えるようにする
Ⅸ その他
◎医師による死亡診断書の発行
・診療が継続している患者がそれに関連する原因で死亡した場合、24時間以内なら、改めて死後診察しなくても、死亡診断書が書ける
・診療後24時間以上経過しても、死亡後に再度診察を行えば死亡診断書の交付ができる
・家族等が確認した時刻を死亡診断書に記載できる
・診療継続中の患者が診療に係る傷病と関連しない原因により死亡した場合、外因による死亡又はその疑いのある場合等、死体に異常を認めた場合は、医師法第21条異状死体として24時間以内に所轄警察署に届出が必要である
・予測される死に対しては、家族の精神的な負担を増やさない配慮をもって向き合う
◎死後の身体の変化
・死体の冷却:体温は周囲の温度に近くなる(1時間に1度位体温が下がる)
・死斑:死後、血液の流れが止まり、溜まった血液の色が皮膚を通して暗赤色に見える
(死後10~30分位から始まり、9~12時間で最も強くなる)
・死後硬直:死後発生した乳酸が筋肉のタンパク質を凝固させ、筋力が弾力を失う(死後2~4時間で始まり、半日程度で全身に及び、30~40時間で硬直が解け始める)
・乾燥:死後、水分の蒸発とともにからだが乾燥する(皮膚・粘膜・口唇・角膜等)
等を学びました。このあと、グリーフケアについても用意されていましたが、時間一杯となり、次回へ持ち越すことになりました。