ケアマネジメントの工程の中で最初に行う「アセスメント」。
ケアプランを立てるにあたり、このアセスメント次第でご利用者様の自立支援に繋がるかを左右しますので、最も重要な業務のひとつと言えるでしょう。
そこで今回のテーマは、『「有する能力に応じる」ケアマネジメント』と題し、認知症の方を中心にアセスメントを行う際の「有する能力」の見極め方のポイントを学びました。
まず、認知症になるのは生涯で何回位あると思いますか?
健常な状態から認知症と診断された時と、疾病によって症状が出てきて周りの反応が変わる時の最低2度は認知症であることをつきつけられています。本人は、2重に不安を感じているのです。
では本題に入ります。
「有する能力に応じる」という言葉は、皆さん何処かで目にしたことがあると思います。
そうです介護保険法の第一条に
・この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
とあり、介護保険法の目的の条文内に用いられています。
また、社会福祉法の第三条にも
・福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない。
とあり、社会福祉法の福祉サービスの基本的理念の中にも盛り込まれています。
さらに、介護保険サービスの運営基準の基本方針の中にも、全ての事業に「有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように・・・」と、しっかりと記載されています。←各自で確認してみて下さい。
まず、「有する能力に応じるケアマネジメント」で大切なことは、相手のことを知り、どう考えて何をするかになります。
①生活の障がいであるということ
②脳が失うのは様々な認知機能であるということ
③人として失うのは今まで通りの暮らしであるということ
④過去だけでなく未来も失うとういこと
⑤補えるものは補う → 保てるように取り戻す手伝い
⑥どうしても無理なら本人の代わりに・・・
また、「有する能力に応じる」とは、私たちの行うケアにおいて唯一統一された共通のものと言えます。その捉え方にはいろいろあり、法に定められた文言であり、理念(あるべき根本の考え)であり、私たちが行うケアの目標(道しるべ)でもあり、質の高いケアを行う際に必ず通る登竜門と言えるのではないでしょうか。
では、介護保険法、社会福祉法、運営基準等に出てくる「有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう」な支援とは、ご利用者様の有する能力を支援スタッフが応じるために、「知ること」「見極めること」が重要であり、ご利用者様が自立した日常生活を営むために、支援スタッフは「出来るようにする」必要があります。
ここで重要なのは、生活の主体はご利用者様本人であり、私たちは暮らしに影響を与える環境としての関わり方を常に考えて「アセスメント」「ケアプランの作成」をしていく必要があり、これが『自立支援』につながっていきます。この自立という言葉は、助力を受けず、人として生きる姿を目指し(目標)、自分のことは自分で、助け合って、社会とつながることで自立していくことになります。
しかし、認知症によって
① 自分で出来なくなる(出来なくなることもある)
② 人とのつながりが難しくなる(難しい時もある)
③ 閉じこもりがちになる(閉じ込めがちになる)
そこで、
① 自分のことは自分で出来るような支援
② 人とつながれるような支援
③ 閉じこもらないような支援
これら、専門性のある支援が期待されています。
では、ご利用者様の自信につながるのは、「やってもらって嬉しい」か「自分で出来て嬉しい」のどちらでしょうか?
もちろん後者「自分で出来て嬉しい」ですね。やってもらうことは、尊厳を保っているのかが問題になります。
よって、専門性のある支援をするためには、
① その人のことを知ることが大事である(知らずして応じることはできない)
② 知ろうとすること、知り続けようとすること(本人の様子の変化に合わせて何度でも修正するもの)
③ 「知った。知っている」なんてありえない!(思いこみにほかならない)
ワーク①
『ご自身が担当しているご利用者様の中から一人を思い出し、その人のことについて、知っていることをできるだけ沢山書き出す』を行いました。
スラスラ書ける人、ペンが止まってしまう人、様々な受講者がいました。
「他人のことを知る」というのは難しいもので、わからないから面白いのかもしれません。しかし、少しでも相手のことがわかった時、相手とわかり合えた時の喜びは格別で、だから「その人探し」は楽しいものなのです。
その人を知っていく中で、この人には「いつ」「どんな」「どれだけの」支援が必要なのかを考えることができるはずです。
例えば、『歩かせて欲しい』というニーズに対して、本人から「痛い!!」と訴えがあった場合に車椅子を使用することは、『~して上げるケア』ではなく、『~して下げるケア』と言えます。こういった下げるケアにならないような支援を考える必要があります。
ワーク②
『短所を長所に考える演習』を行いました。
例えば、「気が短い・せっかち」という短所を長所と捉えたらどのような表現になりますか?
「積極的」や「行動力がある」などではないでしょうか。その他全部で28問ありますので皆さんもチャレンジしてみてはいかがですか?
次に、アセスメントの際の視点(大切なこと)とは、今まで「出来ないこと」、「困ったこと」ばかりを問題にしていた人はいませんか?そのような人は、振り返って反省し、「出来ること・出来ていること」にもっと目を向け、「出来ること・出来ていること」が沢山あることに気付きましょう。そうすれば、能動的な方のケアが適切にできれば、受動的の方のニーズを引き出せるでしょう。
① 自分が理想だと思うケアを提供してあげたい
② 求められているケアを提供することが自分の理想
①と②では全然違います。明らかに②のほうが本来あるべき理想です。①は、相手にとっては“理想”かどうかわかりません。自分本位ではなく本人本位で物事を考えなければなりません。目の前の「今」に追従し、知りながら見極めることの継続が重要です。
意欲の引き出し方として、
① 発揮する機会と活躍の場面を提供する
② 気持ちが動くシナリオの提供
③ 暮らしの中の出番や楽しみごとをつくる
④ 五感や感情に働きかける
⑤ 「しない」ことも「する」こと
⑥ 時には見て見ぬふりをする
⑦ 失敗させない、恥を晒さない
といったことがあり、意欲を引き出す際には、『手を出さず、口を出さず、目を離さず』に気を付けることが重要です。
最後に、認知症の人の有する能力に応じるためには、とんちんかんの裏には、必死に自分の日常をこなそうと頑張っている背景があり、認知症になりたくてなった人は一人もいないので、してあげる介護から人として生きていくことを支える支援が必要である。
私たちが行っている有する能力に応じるケアマネジメントは、
「有する能力に応じる」ケアマネジメント
ではなく
「有する能力に応じるケア」マネジメント
でなくてはならないのです。ご利用者様は、このマネジメントを求めています。