介護支援専門員研修”総合事業”

4月の介護支援専門員研修は、『総合事業』をテーマに、介護予防・日常生活支援総合事業と介護保険改正議論の検証からの混合介護・保険外サービス戦略について学びました。

内容

Ⅰ 国は介護・医療・福祉を2035年にどうさせたいのか?

Ⅱ 介護予防・日常生活支援総合事業の現状と課題

Ⅲ 介護保険制度最新情報

Ⅳ 介護保険外サービス

Ⅴ 介護保険外サービス事例分析

世界でも最前線を突っ走る「高齢化社会=日本」は、1960年~1989年くらいまで『人口ボーナス期』を経験しており(因みに、中国はまもなく終了を迎え、インドは緩やかに2040年頃まで続く)、この人口ボーナス期とは、高齢者が少なく労働力豊富で、社会保障費も高騰せず経済発展が自然にしやすい状態で、医療と年金が充実してくる期をいい、現在の日本は、GDPが横ばいになり、もがいてもボーナス期に体験した経験則の効果が出にくくなっている。

人口ボーナス期はもう戻って来ないと言われており、新しい社会保障のルールが必要であり、それが私たちの新しい介護の役割である。

では、国は介護・医療・福祉を2035年にどうさせたいのか?

アベノミクスのもと、各省庁で様々な議論がされている。(下表参照)

経産省のFC研究会では、フューチャーセンター、イノベーションセンター、リヴィングラボ等の場・活動を社会・経済のイノベーションを生み出す一連の活動として捉えている。

また、次世代ヘルスケア産業協議会では、保健医療について以下の話し合いがされている。

① 量の拡大から質の改善へ・・・地域差

たくさんの均質のサービスが全国各地の人々に行き渡ることを目指す時代から、必要な保健医療は確保しつつ質と効率の向上を絶え間なく目指す時代への変換

② インプット中心から患者にとっての価値中心へ・・・患者主義

設備・人員や保健医療の投入量管理や評価を行う時代から、医療資源の効率的活用やそれによってもたらされたアウトカム等による管理や評価を行う時代への転換

③ 行政による規制から当事者による規律へ

中央集権的な規制や業界慣習枠内で行動、秩序維持の時代から、患者、医療従事者、保険者、住民等当事者による自律的で主体的なルール作りを優先する時代への変換

④ キュア中心からケア中心へ・・・死に方

疾病の治癒と生命維持を主目的とする「キュア中心」の時代から、慢性疾患や支障を抱えても生活質を維持・向上、精神的・社会的な健康を目指す「ケア中心」時代への転換

⑤ 発散から統合へ・・・ホームドクター

制度の細分化・専門化を進め、利用者の個別課題へ対応する時代から、価値やビジョンの相互連携を重視し、多様複雑化する課題の切れ目のない対応の時代への変換

文科省の地(知)の拠点大学による地方創生推進事業では、人口流出ストップ・地域の持続的発展に向けてと題して下表のような話し合いがされている。

これら「まち」「ひと」「しごと」創生会議での長期ビジョンとして2060年には、①人口減少問題の克服 ②成長力の確保がうたわれている。

介護保険制度最新情報

介護保険制度の見直しにあたっては、これまでの制度改正等の取り組みをさらに進め、地域包括ケアシステムの推進と介護保険制度の持続可能性の確保に取り組むことが重要と考えられている。

具体的には、地域包括ケアシステムについては、地域の実情にお応じたサービスの推進や医療と介護の連携、地域支援事業・介護予防の推進、サービス内容の見直しや人材の確保が検討されており、介護保険制度の持続可能性の確保については、給付の在り方と負担の在り方について検討されています。また他には、要介護認定等保険者の業務簡素化や被保険者範囲についても検討されています。

介護保険制度には、「保険者間の差を抑制し適正化を図る仕組み」や「必然的に地域差を生じさせる要素」があり、介護保険制度における多角的な地域分析の必要だと言われています。保険者間の差を抑制し適正化を図る仕組みには、全国一律の基準に基づき要介護度を認定することや在宅サービスについて、要介護度に応じた区分支給限度額基準を設定すること等があり、必然的に地域差を生じさせる要素には、高齢者の状態や都市部・山間部といった地理的条件、独居等の家族構成、介護サービス水準と負担等に関する市町村の考え方等地域ごとの実情が、サービス提供に反映することがあります。

地域包括ケアの具体例として、大分県の取組が事例として揚げられおり、

上表のようにケアプランを「お世話型のケアマネジメント」から「自立支援型のケアマネジメント」へと見直し、

上表のように要介護認定率が改善されてきました。

重要なのは、保険者がこれらを強力に推進できるよう、保険者機能を強化するとともに、都道府県による保険者支援機能も強化する必要がある。

新しい地域支援事業として平成28年頃から介護予防・日常生活支援総合事業(通称「総合事業」)が各自治体において始まりました。これは、予防給付のうち訪問介護と通所介護について、市町村が地域の実情に応じた取り組みができる介護保険制度の地域支援事業へ移行し、既存の介護事業所による既存のサービスに加えて、NPO、民間企業、ボランティア等地域の多様な主体を活用して高齢者を支援する新しい事業も始まる。高齢者は支え手側に回ることもある。

介護保険制度の見直しに関する意見として、「地域包括システムの深化・推進」として、以下のような意見が出ている。

1.自立支援・介護予防に向けた取り組みの推進

(1)保険者等による地域分析と対応

【データに基づく課題分析と対応】

・各保険者が地域の実態を把握・課題を分析

・介護保険事業計画に、目標・取組内容等を記載

・リハ職との連携等による自立支援・介護予防施策の推進

【適切な指標による実績評価】

・要介護状態の維持・改善度合い、地域ケア会議の開催状況等の適切な指標  に従い、実績を評価

【インセンティブ】

・評価結果の公表、財政的インセンティブの付与の検討

【国や都道府県による支援】

・各都道府県・市町村の地域分析に資するデータの提供(国)

・研修や医療職派遣に関する調整等(都道府県)

(2) 地域支援事業・介護予防・認知症施策の推進

・ケアマネジメント支援について、地域の住民や事業所を含めた『地域全体  をターゲットとする支援』へ拡大

・地域包括支援センターの機能強化(土日祝日の開所、地域ケア会議の内容  の具体化・明確化、市町村による評価の義務付け等)

・介護予防に関するポイント付与が出来ることの明確化

・認知症の容態に応じたサービスを受けられる仕組みの構築

・認知症の人の視点に立った施策の推進

(3) 適切なケアマネジメントの推進等

・ケアマネジメント手法の標準化に向けた取組の推進

・居宅介護支援事業所の運営基準等の見直し検討(管理者の役割、公正中立の確保等)(報酬改定時に検討)

2.医療・介護の連携の推進等

・医療介護連携の実態把握、課題の検討、課題に応じた施策立案に至る方法  を国が具体化し、市町村にその実施を求める

・介護保険事業支援計画に、在宅医療・介護連携推進事業に対する医療部局  との連携を含め、より実効的な市町村支援を盛り込むなど、都道府県の介護部局及び医療部局の双方が市町村支援に取り組むこととする

3.地域包括ケアシステムの深化・推進のための基盤整備等

(1)地域共生社会の実現の推進

・共生型サービスを位置付け

・相談支援専門員とケアマネジャーの連携の推進

(2)介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)

・ロボット・ICTに係る介護報酬や人員・設備基準の見直し等

・提出書類等の見直しや簡素化

(3)サービス供給への保険者の関与

・市町村協議制の対象拡大(ショートステイ)、地域密着型通所介護の指定拒否の仕  組の導入、居宅サービス指定への市町村関与の強化

(4)安心して暮らすための環境の整備

・有料老人ホームについて、前払金の保全措置の対象拡大等の入居者保護の ための施策の強化等

自立支援・介護予防に向けた取り組みの推進としては、平成28年11月10日の第2回未来投資会議において、安倍総理が、「これまでの介護は、目の前の高齢者ができないことをお世話することが中心であり、その結果、現場の労働環境も大変厳しいものでした。これからは、高齢者が自分で出来るようになることを助ける『自立支援』に軸足を置きます」「本人が望む限り、介護が要らない状態までの『回復』をできる限り目指していきます」「見守りセンサーやロボット等を開発し、そして導入し、介護に携わる方々の負担を軽減するとともに、介護現場にいる皆さんが自分たちの努力や、あるいは能力を活かしていくことによって『要介護度が下がっていく達成感』を共に味わうことができるということは、『専門職としての生きがい』に繋がっていくというととではないか」と発言しています。

上の総理の発言の中に「『回復』とあるが、介護保険法には「軽減又は悪化の防止」は謳われているが、」『回復』とは一か所も記載されていない。

介護における『回復』というのは、医療サービスであって、介護サービスには回復というミッションはない。

安倍総理の意向を汲んで、医療系サービスは「結果」を求め、努力して、介護度を下げてくるということは、今まで以上に介護度の下がり具合が加速するであろう。

医療・介護の連携の推進としては、激変する地域医療の役割。ピラミッド型のチーム医療、チーム介護より、役割をフラットにした顔の見える、いつでも聞き合える関係である新しいチーム構築が必要であり、連携の進化としての医療と介護の『規範的統合』が求められている。

地域包括ケアシステムの深化・推進のための基盤整備としては、介護保険サービスと障がい福祉サービスを一体的に提供できる事業所、相談支援専門員とケアマネジャーの連携の推進等が必要になってくる。また、地域包括支援センターの機能強化も必要で、土日祝日の開所、地域ケア会議の明確化、市町村による評価の義務等がある。

次に、地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの事例集 保険外サービス活用ガイドブックの中に、下表が掲載されている。

このように保険外サービスを提供している団体がいくつかあり、様々なニーズへの対応が可能になっている。

興味のある方は、このガイドブックを見て下さい。ネット上からダウンロードして見ることができます。

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